『おかゆネコ 1』吉田戦車〜しゃべるねこがお粥を振る舞うねこマンガ

『おかゆネコ 1』吉田戦車〜しゃべるねこがお粥を振る舞うねこマンガ

ねこ本書評 #04

ナンセンスなギャグと、キュートなファンタジーが入り混じった作風が魅力の吉田戦車さんによる漫画作品『おかゆネコ』。人間のようにいろんなことができて、可愛くもシニカルなねこ、”ツブ”が活躍する楽しいねこ漫画です。

『伝染るんです。』『ぷりぷり県』などを代表作とする漫画家・吉田戦車さんは、2頭のねこたちと生活する愛猫家。そんな日々から生まれた本作は、共感のオンパレードです。いくらねこ好きでも、「ねこはかわいいけどお世話は大変」なんて思うことがありますよね? 物語にはそういったお悩み解決願望がちょっぴり反映されていて、主人公のツブはしゃべることもできてお料理もできるという、自立したねこなのです。

謎の「しゃべり病」とは⁉︎

長期旅行に行く両親ため、実家の飼いねこツブを預かることになった30代のサラリーマン・八郎。ねこのツブは会った途端、八郎に向かって「よろしくな!」と話しかけてきます。驚く八郎に「ツブは1年ほど前にしゃべり病にかかったんだ」と言い残し、両親はさっさと旅立ってしまいます。しゃべり病…それは突然人間の言葉をしゃべりだし、知能も人間並みになるという奇病だったのです…。 

ツブのしゃべり病に衝撃を受けた八郎でしたが、突然バッタリと倒れてしまいます。ビール会社の営業マンとして日々ハードワークをこなす八郎は、前日からろくに食事を取ってなかったのでした。そんな八郎のためにツブは「おかゆでも煮てやる」と宣言し、キッチンに立ち、ありものの材料で手際よく、おかゆを作ってくれます。 

ツブはしゃべれて、字も読めて、料理もできて、主張を持つねこ

もちろん、ねこらしい可愛いさも!

毎回、様々なオリジナルのおかゆを毎回考案して人々に振る舞い、喜ばせたりドン引きさせるツブは、ほとんど人間のよう。 しかし、キッチンに立ち、しゃべるようになっても、ツブにはねこらしさもちゃんと残っています。お尻をぷりぷりさせながら「ひと撫でしていきなよ」と誘ったり、人の肩に乗りたがったり…。ねこらしさも、ねこらしくないところも、どちらもツブの魅力なのです。 

ちなみに”ツブ”という名前は「ごはん粒」がその由来。亡きおばあちゃんに付けてもらったこの名前を、ツブは心から誇りに思っています。モノクロのマンガですが、どうやら黒白にゃんこらしいツブ。白米のような白地に、海苔を巻いたような、おにぎりを思わせる柄が素敵なねこなのです。 

背中に四角い黒い模様があるツブは、海苔を巻いたおにぎりのよう 

ギャグとファンタジーに現実が入り混じって

「しゃべり病」という設定を冒頭にさらりと登場させ、読者を納得させてしまうのが、ギャグ漫画界の巨匠・吉田戦車さんのすごさです。次々現れる変わった人物や動物、唐突に起こる不思議な現象にも、テンポの良さや独自のつじつま合わせで「そんなのあり?」という疑問を挟ませることなく、どんどん独自の世界に引きずりこんでしまいます。 

当作品にはナンセンスなギャグだけでなく、可愛らしさや夢、ファンタジーが織り込まれ、うっとりさせられるようなエピソードも出てきますが、時には厳しい現実が入り混じってくることも。しゃべり病でいろんなことを理解できるようになったツブが「震災の時、テレビを見ていて辛かったな」とつぶやき、岩手県三陸産の食材を「おいしく食べてあげないと」と腕を振るう姿には、ぐっと熱いものがこみ上げます。 

続きがすぐに読みたくなる「おかゆネコ」は全7巻、発売中 

唯一無二のねこマンガ『おかゆネコ』、一巻読めばきっと次の巻も読みたくなりますよ。 


書籍情報

著者:吉田戦車 
発売日:2013年2月28日 
定価:本体743円+税 
判型:A5判 
出版社:アルファポリス 

まずは1巻を読んでネ

(編集部)