拾ったねこが生きる勇気に! 『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』/銀幕のねこたち#05

拾ったねこが生きる勇気に!  『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』/銀幕のねこたち#05

夢破れ、人生を諦めかけていたミュージシャン志望の青年が、迷いねこ・ボブとの出会いによって少しずつ立ち直り、さらに幸運を手に入れていくという奇跡のノンフィクションストーリー。茶トラねこ・ボブの可愛さをたっぷり堪能できる、感動のヒューマンドラマ!

本作は、青年本人であるジェームズ・ボーエンが書いたノンフィクション書籍『ボブという名のストリート・キャット』が原作です。

ロンドンの街で希望をなくした青年ジェームズ

ジェームズはギターで弾き語りをするストリートミュージシャン

幼いころから家族との縁が薄かった青年・ジェームズは、ミュージシャンになるという夢にも破れ、人生に希望も目標も持てず、薬物依存に陥ってしまいます。ギターだけを抱え、ロンドンの街でホームレス状態になってしまったジェームズ。知り合いといえば、薬物依存の道に引き戻そうとするジャンキー仲間だけでした。このころのジェームズの姿は、かなり絶望的に見えます。お腹を満たすだけのお金もなく、ゴミ箱を漁り、立ち直れそうな可能性すら見えません。

あるとき、薬物摂取で危険な状態になったジェームズは、病院で目覚め、己の惨めさに泣き崩れるのでした。そして親切なケースワーカーの女性・ヴァルに再生を誓ったジェームズは、幸い住む部屋を得ることができますが、その生活はやはり心もとないもの。路上ライブで稼ごうとしても世間は冷たく、不安定な日々が続きます。

ねこがくれたセカンドチャンス

ボブはジェームズの肩に乗って街に出かけます

そんなある日、茶トラのねこが、ジェームズの部屋に入ってきます。ジェームズは飼い主を探してやろうと近所をたずねて回りますが、なかなか見つかりません。そして路上ライブに出た帰り、また同じねこを見かけます。しかも、今度はどうやら足にひどい怪我している様子…。 

近所の犬好きの女性・ベティに教えてもらった動物病院に連れて行き、なけなしの生活費を払ってねこを助けたジェームズ。すっかりこのねこに愛着がわいたジェームズは、ボブという名をつけて一緒に暮らすことを決意します。それからのボブは、ジェームズの肩に乗って、良きバディとして、いつもジェームズと一緒に行動するようになります。 

この出会いによって、ジェームズの運は急上昇。路上ライブに連れて行けば、ボブの可愛さで人が集まり、演奏への投げ銭の金額も跳ね上がります。しかし、ラッキーなことが続くのをやっかむ人や「ボブを譲って欲しい」という強引な人からの横やりが入り、事態は一進一退。そして何か事件が起こる度に、ジェームズは踏ん張って戦い、努力して成長し、ジェームズ自身も変化していくのでした。

本ねこ”ボブ”が演技を披露

もう一度生きるチャンスをくれた茶トラねこのボブ(本ねこ)

この奇跡の物語が実話とは、本当に驚きですね。出会ったかわいいねこによって、幸運に恵まれていくなんて、日々ねこと暮らしている皆さんには、羨ましくなるような、とても素敵なストーリーではありませんか? 

本作に出演しているねこは、すばらしい演技派ニャンコに見えます。動物プロダクションからやってきた、さぞかし経験豊富な俳優ねこだろうと思ったら、なんとほとんどのシーンを、本人ならぬ”本ねこ”のボブが出演しているそうなんです。それを知ってから観ると、なお感慨深いものがあります。 

ちなみに、作品中、ジェームズさん本人もカメオ出演を果たしています。通常、カメオ出演というとなかなか分かりづらいですが、本作ではちゃんとセリフもあってわかりやすくなっています。このシーンも見逃さないよう、しっかりチェックしてみてくださいね。 

出会ってから10年以上が経過した現在も、ボブとジェームズさんは、一緒に仲良く暮らしているそうです。ジェームズさんはすっかり薬物依存からも立ち直り、人生の大切さを噛み締め「だれにでもセカンドチャンスはある」と多くの人に伝えるチャリティー活動を続けています。 

思い出の地でボブが見せる名演に注目!

本物のボブがほとんどのシーンを演じている本作。実はジェームズさんの原作に沿って、ロケ地も実際にボブが過ごした場所を使っているそうです。思い出の場所だから、ボブはより素晴らしい名演技ができたのかもしれませんね。タイトルにある”ハイタッチ”をするボブは、最高にかわいいです。人を幸せに導びくボブの一挙手一投足を、じっくり堪能してくださいね。 



作品情報
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』 
ブルーレイ&DVD発売中! 
Blu-ray価格:¥4,700(本体)+税 
DVD価格 :¥3,800(本体)+税 
発売元:コムストック・グループ 
販売元:ポニーキャニオン 
監督:ロジャー・スポティスウッド(『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』)   
出演:ルーク・トレッダウェイ(『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』)、ジョアンヌ・フロガット(『おみおくりの作法』)、ルタ・ゲドミンタス(『ストレイン』)、アンソニー・ヘッド(『ゴーストライダー2』)ボブ(猫) 
<英語/2016年/103分>

©2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.


市川はるひ 

東京都出身。長い演劇活動を経て、現在は主に映画ライター。作家性の強い作品やアート系を中心とした新作映画を、自主運営サイト「東京・ミニシアター生活」で紹介している。マスコミ試写会で得た感動が「作品を観るべき人に届くように!」と願い、熱量多めの文体でお届け中。ときにはインタビュー記事やイベントレポートも掲載。家族は、多頭崩壊から保護された父・娘のねこ2頭と夫が1人。

映画紹介サイト「東京・ミニシアター生活」
 https://www.minithea.tokyo