【チラねこ見逃し注意!】震災に負けない明るさに感動『盆唄』/銀幕のねこたち#01

【チラねこ見逃し注意!】震災に負けない明るさに感動『盆唄』/銀幕のねこたち#01
 

原発事故被害の影響で、存続の危機にある福島県・双葉町伝統の「双葉盆唄」を歌い継ぐために、双葉の太鼓の名手たちが向かった先は、なんとハワイだった…!?
現在(2018年2月)上映中の映画『盆唄』は、盆踊りで歌い踊る人々とその文化を見つめ、福島とはるか遠くの島ハワイが、伝統の「盆唄」でつながっていく様子を描く、心温まるドキュメンタリー映画です。

意外な土地で見出される「双葉盆唄」存続の活路

2015年、東日本大震災から4年経っても福島県双葉町に帰れず、散り散りになったままの祭りの楽士たちがいました。太鼓の名手で電気店を営んでいた横山久勝さんもその1人。避難先で、倉庫のような住居で生活しています。それでも山ほどのギターに囲まれ、もはや仮暮らしではない、音楽を愛する人が住み慣れた雰囲気が漂います。

地元で歌い継がれてきた「双葉盆唄」を再び演奏しようと、太鼓や唄の名手が集って練習を始めますが、笛の音も歌う声も、4年間のブランクで、かつてのようには響きません。悔しがるみんなの胸に「町の再生が望めない今、このまま双葉盆唄も消えてしまうのか…」という寂しさが広がるのでした。

そんなとき、ハワイの日系人文化を撮り続けている女性カメラマンから、意外な情報が。「日系3世が演奏する「フクシマオンド」が、ハワイで100年以上続いてる」。
現地ハワイへ旅立った横山さん一行は、そこで繰り広げられるハワイのボンダンスに感動。「自分たちの盆唄をハワイに託す」というアイデアがひらめきます。「いつか双葉町が復活したら、ハワイから双葉盆唄を伝えてもらう…そんな形で双葉盆唄をうたい継いだらどうだろう?」と…。

さまざまな魅力に溢れたドキュメンタリー

本作『盆唄』は、東日本大震災が切り離せないドキュメンタリーですが、希望と明るさに満ちた作品です。監督は『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』の中江裕司。
ハワイの熱く幻想的なボンダンスの夜、震災後の双葉町の様子、そして作品の中で、双葉町の楽士たちによって見事に復活していく「双葉盆唄」の音色とうた声など、貴重な映像や見どころがいっぱいです。「双葉盆唄」にまつわる言い伝えは、アニメーションで表現され、余貴美子、柄本明、村上淳といった豪華なキャストが声で出演をしています。

スクリーンに満ちる「ふるさと愛」

放射線量が高く、立ち入りを制限されている双葉町に入っていく横山さんたちの様子も、とても印象的です。後ろ向きな雰囲気は見られず、うれしそうに懐かしい大木にしがみついたり、初老の幼馴じみ同士でお互いを「◯◯ちゃん」と呼び合います。子ども時代のやんちゃな記憶をたどり、はしゃぎながら思い出を語ってくれます。

横山さんたちのふるさと福島県双葉町と双葉盆唄への愛情がスクリーンに溢れ、胸が熱くなります。かわいいうり坊も姿を現しますので、ぜひご注目下さい。

ねこさん登場シーンはここだ!

横山さん宅には、一緒に暮らす小さな子ねこもいます。いずれは自慢になりそうなシッポは、まあまあ長めだけれど、まだ人の小指ほど。そんなシッポをピンと立てたり、ふるふると震わせている子ねこも、スクリーンに登場します。


©2018テレコムスタッフ
■『盆唄』作品情報
2019年2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー!
フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開!
監督:中江裕司(『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』)
出演:福島県双葉町の皆さん、マウイ太鼓 ほか
声の出演(アニメ―ション):余貴美子、柄本明、村上淳、和田聰宏、桜庭梨那、小柴亮太
配給:ビターズ・エンド
<日本/2018年/134分/ビスタ>
『盆唄』公式HP www.bitters.co.jp/bon-uta/


市川はるひ 

東京都出身。長い演劇活動を経て、現在は主に映画ライター。作家性の強い作品やアート系を中心とした新作映画を、自主運営サイト「東京・ミニシアター生活」で紹介している。マスコミ試写会で得た感動が「作品を観るべき人に届くように!」と願い、熱量多めの文体でお届け中。ときにはインタビュー記事やイベントレポートも掲載。家族は、多頭崩壊から保護された父・娘のねこ2頭と夫が1人。

映画紹介サイト「東京・ミニシアター生活」
 https://www.minithea.tokyo