ねこと暮らす幸せが胸に迫る『愛しのノラ 幸せのめぐり逢い』/銀幕のねこたち#02

ねこと暮らす幸せが胸に迫る『愛しのノラ 幸せのめぐり逢い』/銀幕のねこたち#02

シナリオライター九十九と妻の家に入り込んできた野良ねこシロ。共に暮らしてすっかり家族になったのに、ある日突然シロは姿を消してしまいます。「つれなくしたせい?」仕事そっちのけでシロを捜索したり、後悔して泣いたりを繰り返す日々の中、さらに妻ひよりの身に不安が降りかかり…果たして九十九夫妻はシロに再会できるのか? 愛猫への想いをつづった内田百閒の随筆集『ノラや』にインスパイアされた、しみじみ&感動の物語。

「シロ、お前はどこに行ったんだ…」

谷中あたりの古い一軒家に住む、あまり売れていないシナリオライターの九十九朔美(水澤紳吾)は、愛猫シロと過ごしながら、パソコンに向かう毎日。執筆の手が進まなかったり、つい通帳の残金を馬券につぎ込んでしまったり、酔っ払ってお財布を落としたり…だらしない九十九は、妻・ひより(大島葉子)に支えられながら、なんとか仕事をつなぎながら暮らしています。

ある日、仕事で頭がいっぱいの最中、シロの鳴き声に苛立った九十九は、少し乱暴にシロを追い出してしまいます。しかしすぐに反省し、いつもよりいいねこ缶を買ってきて開けますが、シロには食べてもらえません。気分がモヤモヤしているうちに、外に出かけたシロが日が暮れても戻ってこなくなってしまうのです。仕事も手につかず、妻と一緒にシロを探し回る九十九。「シロ、お前はどこに行ったんだ」…。

シロを溺愛する夫婦

「ねことの暮らしあるある」がいっぱい!

とっても美しい体の白ねこ・マイコちゃんが演じるシロがとにかくキュート。九十九夫妻が溺愛するのも納得の愛らしさです。パソコン仕事に集中しているときに限ってキーボードに乗ってきたり、狭いところにちょいちょい入り込んでしまったり…。ねこと共に過ごす生活の、ごく普通の「あるある風景」が満載。「ねこと暮らすって本当にいいものだな」と感じられるシーンがいっぱいです。

シロ、お前はどこに行ったんだ…

そして、そんな愛らしいシロがいなくなってしまい、夜も眠れず、捜索のビラを貼れば、意地悪ないたずら電話がかかってきたり、いなくなった日を反芻してしまったり…。涙に暮れる九十九の姿は、ねこと暮らす人ならば、切なくて切なくて、胸を締め付けられてしまうでしょう。

九十九夫妻を演じる2人、水澤紳吾と大島葉子も「だらしないしょぼくれたクリエイターの夫」と「堅実でしっかり者の妻」という風情がしっくりくる俳優です。2人とも柔らかい声に、飾らない雰囲気で、ねことの相性もぴったり。本当に「古い一軒家に住んでいそうな夫婦」という印象なんです。

ねこ好き必見ポイント!

本作は、ねこを愛する人なら、笑えて泣けて、感動が押し寄せてくる、素朴で愛情たっぷりの物語。感動にさらに彩りを加えるのは、エンケンこと純音楽家・遠藤賢司が歌う楽曲「カレーライス」です。共働きの九十九家の夕飯の定番は、カレーライス。2人でカレーライス食べる横で愛猫シロがごろんと転がる中、主題歌が流れます。ねこと暮らす何気ない幸せがグッと胸に迫るシーンです。

(写真提供=NSW)


■『愛しのノラ 幸せのめぐり逢い』作品情報(DVD)
2019年2月6日(水)発売/価格:¥3,800+税
監督:田尻裕司(『こじっぱみじん』)  
出演:水澤紳吾(「SR サイタマノラッパー」シリーズ、「怒り」)、大島葉子(「朱花(はねず)の月」「ヘヴンズストーリー」)守屋 文雄、マイコ(白ねこ)&カール(黒ねこ)、梶三和子、速水今日子、工藤翔子
販売元:ブロードウェイ
<日本/2017年/84分>


市川はるひ 

東京都出身。長い演劇活動を経て、現在は主に映画ライター。作家性の強い作品やアート系を中心とした新作映画を、自主運営サイト「東京・ミニシアター生活」で紹介している。マスコミ試写会で得た感動が「作品を観るべき人に届くように!」と願い、熱量多めの文体でお届け中。ときにはインタビュー記事やイベントレポートも掲載。家族は、多頭崩壊から保護された父・娘のねこ2頭と夫が1人。

映画紹介サイト「東京・ミニシアター生活」
 https://www.minithea.tokyo