トラだってねこ科!LOVE&PEACEを表現し続ける謎の人『新宿タイガー』/銀幕のねこたち#04

トラだってねこ科!LOVE&PEACEを表現し続ける謎の人『新宿タイガー』/銀幕のねこたち#04

タイガーマスクのお面にウイッグ風のピンクの羽をつけ、上から下までド派手な格好。彼は人呼んで”新宿タイガー”。職業はなんと新聞配達員。70年代に、新宿にやってきて以来、タイガーマスクのお面をつけて、雨の日も台風の日も、黙々と新聞を配ってきた”新宿タイガー”さんの、素顔に迫るドキュメンタリー映画です。

タイガーの下の、素顔見せます

ときには自転車、ときには小走りで都会・新宿を駆け抜ける謎の人。この人目を引く姿で、新宿を忙しく走り回って新聞配達している新宿タイガーさんは、まごうことなき実在の人物。ただのウワサや都市伝説ではありません。新宿に出かける機会の多い人なら、実際にその姿を見かけたことがあるでしょうか。 

仕事中はずっとタイガーマスクのお面をつけたままで、熱心に新聞を配っています。でも本作では惜しみなく、お面をとった顔を見せてくれます。その素顔は、底抜けに明るくて、とってもおしゃべりなおじさま。いつもニコニコ機嫌が良くって、街にいる仲間や友だち、愛する人々に笑顔や温かい言葉を投げかけます。 

モットーは”LOVE&PEACE”

当時24歳だった新宿タイガーさんは、新宿にやってきたその日からタイガーマスクのお面をつけるようになりました。来る日も来る日もお面をつけて着飾って新聞配達をしていたので、最初はただの変わり者のと思われていたようですが、今ではもうすっかり街の顔。例えば、TOWER RECORD新宿店では、今まで2回も、新宿タイガーさんを新宿の顔として、店のPRポスターのモデルに起用しています。ほかにも様々なメディアの取材を受ける機会も増えました。 

外国人観光客に一緒に写真を撮って欲しいと声をかけられれば、愛想よく応える新宿タイガーさんのモットーは”LOVE&PEACE”。それを表現するためにも、彼はこのスタイルを貫き続けているのです。 

朝刊を配り終え、夕刊を配るまでのプライベートタイムも、新宿で過ごすことが多い新宿タイガーさんの一番の趣味は、映画鑑賞。アート映画からハリウッド大作まで、新宿の映画館を中心に、あらゆる作品を観に行きます。 

新宿タイガーに愛される美女たち

人生のオールタイムベストは、オードリー・ヘップバーン主演のあの人気作。とってもロマンチストのうえに、美女が大好き。だからお気に入りの女優さんが演劇の舞台に出演すると聞けば、街を出て劇場へ観劇に出かけ、花束を贈り、賞賛の言葉を捧げます。そんな新宿タイガーさんに支えられてきた美女たちも、本作にはたくさん登場し、新宿タイガーさんについて話しています。 

新宿タイガーさんがやってきた当時1970年代の新宿は、社会運動のまっただ中。その時代の名残を、今もわずかに残しているのが、新宿の名物飲み屋街”新宿ゴールデン街”です。 

古き良き新宿を感じさせるお店がところ狭しと並んでいるこの新宿ゴールデン街には、新宿タイガーさんの行きつけもたくさんあります。 

本作では、新宿ゴールデン街を中心に行われた、新宿タイガーさん本人と、新宿の住人たちのインタビューを収録。新宿タイガーさんの人物像ともに、新宿という街そのものの歴史も振り返します。1970年代のカルチャーや新宿という街に興味のある方にも、オススメの作品です。 

ねこ科のトラのぬいぐるみがいっぱい! ホワイトタイガーはどこにいる?

新宿タイガーさんがフル装備のときは、大量のぬいぐるみをぶら下げています。それも1つ2つではありません。かっこいいいトラのぬいぐるみは、いったいいくつぶら下がっているでしょうか? そしてよく見ると、ホワイトタイガーのぬいぐるみもいます。どこにいるのか、じっくり探してみてくださいね。 


©「新宿タイガー」の映画を作る会 
■『新宿タイガー』作品情報 
2019年3月22日(金)よりテアトル新宿にてレイトショー公開 ほか全国順次 
監督・撮影・編集:佐藤慶紀 
出演:新宿タイガー、寺島しのぶ(ナレーション) 
八嶋智人 渋川清彦 睡蓮みどり 井口昇 久保新二 石川ゆうや 里見瑤子 宮下今日子 外波山文明 速水今日子 しのはら実加 田代葉子 大上こうじ、他 
配給:株式会社渋谷プロダクション 
<日本/2019年/83分> 
『新宿タイガー』公式HP http://shinjuku-tiger.com/


市川はるひ 

東京都出身。長い演劇活動を経て、現在は主に映画ライター。作家性の強い作品やアート系を中心とした新作映画を、自主運営サイト「東京・ミニシアター生活」で紹介している。マスコミ試写会で得た感動が「作品を観るべき人に届くように!」と願い、熱量多めの文体でお届け中。ときにはインタビュー記事やイベントレポートも掲載。家族は、多頭崩壊から保護された父・娘のねこ2頭と夫が1人。

映画紹介サイト「東京・ミニシアター生活」
 https://www.minithea.tokyo