『Mermaid Avenue 2』Billy Bragg & Wilco〜”Hobo”の変遷〜/お宝ねこジャケコレクション#03

『Mermaid Avenue 2』Billy Bragg & Wilco〜”Hobo”の変遷〜/お宝ねこジャケコレクション#03

今回紹介するビリー・ブラッグ&ウィルコの『Mermaid Avenue 2(マーメイド・アベニュー2)』というアルバムは、まるで第1回のライ・クーダーのアルバム『My Name Is Buddy(マイ・ネーム・イズ・バディ)』の続きのような作品である。

プロテストシンガー、ウディ・ガスリーの意思を継ぐ

『My Name Is Buddy』で ”Hobo” のバディたちが貨物列車に飛び乗って旅をした舞台は、大恐慌時代真っただ中、1930〜40年代のアメリカ(Hoboについては#01を参照)だった。それから数十年後。彼らHoboの、悲哀に満ちた人生を文学や歌詞にしたアーティストたちがいた。文学界の代表ではもちろん、ピューリッツァー賞を受賞した小説家『怒りの葡萄』のジョン・スタインベック。そしてもう1人は、プロテストシンガーで、アメリカ第2の国歌とも呼ばれている『我が祖国』を作ったウディ・ガスリーだ。 

シニカルなインテリ、スタインベックに影響されたのがライ・クーダーなら、アメリカンフォークソングの父、闘うホーボーシンガーのウディ・ガスリーから意思を継いだミュージシャンもいる。それが、イギリス生まれのビリー・ブラッグ。エレキ1本でパンクに弾き語るから、通称”ワンマン・クラッシュ”と呼ばれてきた男だ。 

『Mermaid Avenue 2』では、このビリー・ブラッグが、オルタナカントリーの雄・ウィルコを連れ、ウディ・ガスリーの意思を現代に蘇らせる。機関銃の弾のように吐き出す言葉は、圧倒的だ。

ビリー・ブラッグ&ウィルコの骨太なコンビネーション

ウディ・ガスリーのギターには”This Machine Kills Fascists”なんてアグレッシブなフレーズが書かれていたそうだ。これはパンク畑からやってきたビリー・ブラッグの魂を動かすには充分なエピソード。そしてウディ・ガスリーが残した膨大な数の詩を受け継いだビリー・ブラッグは、相方ウィルコとともに、曲を書き下ろしたのだ。もちろん、その歌詞の内容は相当にへビーに攻めているものもある。だからぜひ、対訳のある日本版か翻訳された歌詞を手に入れて読んでみてほしい。 

ウディの歌詞は過激でアナーキー。歌うビリー・ブラッグは最高のアジテーターだ。ウィルコとのハーモニー&コンビネーションもバッチリ。一番のおススメ曲は「Aginst th’ Law」と「All You Fascists」の2曲。どこかの誰かさんに爆音で聞かせてやりたい。 

こんな風に、Hoboは時代の流れと共に、文学・音楽・スクリーン・ファッション・思想にまたがって世界を旅するようになっていった。都会のアンダーグラウンド社会で生きるビートニクへ、そして独自のコミューンで生きるヒッピー文化へ…さらにパンクへと。まるで貨物列車から乗り物を代えるように、職業を指すスラングから徐々に、生き様を指す言葉へと姿を変えていったのだ。 

人間たちを傍観する愛しいねこ

さて、この『Mermaid Avenue 2』には、ジャケットにねこが登場しているんだけど、その理由は申し訳ないことに、僕にはよくわからない。『Mermaid Avenue』はシリーズ化されていて、これはその第2弾なのだが、このアルバムのジャケットにだけ、ねこが登場している。まるで混乱する人間世界を塀の上から傍観するような眼差し。内容ももちろんだが、この意味ありげなねこの表情にも、僕は非常に惹かれた。 

そしてビリー・ブラッグの相方であるウィルコの方は、バンドメンバーの死や決別を経験し、このあとアメリカを代表するモンスターロックバンドに化けるのである。今後別の回で紹介することになると思うが、ウィルコのアルバムにも、ねこジャケがあったりする。 

ウィルコについても、なぜねこジャケなのか、ねこが好きだからなのか、僕にはよくわからない。でもねこは可愛いし、いいじゃないか。僕だって、ジャケ買いしてるわけじゃないのに、なぜかコレクションには、ねこジャケのアルバムが多い。それと同じことなんじゃないか? 


『Mermaid Avenue 2』作品情報

★収録曲
1.「Airline to Heaven」2.「My Flying Saucer」3.「Feed of Man」4.「Hot Rod Hotel」5.「I Was Born」6.「Secret of the Sea」7.「Stetson Kennedy」8.「Remember the Mountain Bed」9.「Blood of the Lamb」10.「Aginst th’ Law」11「All You Fascists」12.「Joe Dimaggio Done It Again」13「Meanest Man」14.「Black Wind Blowing」15.「Someday Some Morning Sometime」
★レーベル:エクストラ・レコード
★リリース年月:2000年5月 


佐藤洋平 

福島県郡山市出身。高円寺の老舗ライブハウス「稲生座」番頭、猫の任意保護団体「高円寺ニャンダラーズ」代表。中学生から郡山の音楽喫茶に出入りし、米国や英国の新旧音楽を聴きかじる。多感な時期に聴いた”The Fools”などのレベルミュージックの影響で、不屈のスピリットを目指すようになる。2011年より、福島第一原発事故被災動物のレスキュー活動を開始。高円寺周辺を根城に猫の保護活動や猫に関する啓蒙活動なども行う。

高円寺ニャンダラーズサイト http://nyandollars.org/

高円寺ニャンダラーズブログ https://ameblo.jp/nyandollars/