『WHIRLPOOL』Chapter house〜深い海で眠るねこ/お宝ねこジャケコレクション#05

『WHIRLPOOL』Chapter house〜深い海で眠るねこ/お宝ねこジャケコレクション#05

英国ロックフェスの街・レディング産のバンドChapter houseのアルバム『WHIRLPOOL』を紹介する。今回も何も落ちてない足元をじ〜っと見つめたまんまの”シューゲイザー(「靴を見つめる人」という意味の音楽スタイルの1つ)”のサウンド。ぜひ爆音で(ここ大事!)聴いてみてほしい。

レディングフェスが生み出した音楽

レディングは、前回の『The Comforts of Madness』Pale Saintsの出身地リーズから、ずっと南下してロンドンの西あたり。 ここレディングと言えば70年代から続く、ロックフェスの草分け的な野外コンサート「レディング・フェスティバル」が有名だ。どうやら99年ごろから「レディング&リーズフェスティバル」と呼ばれ、共通券でレディングとリーズ、双方の街のステージを観ることができるようになったらしい。かなり距離は離れてるけどね。

2つの街、リーズとレディングのつながりは「レディング&リーズフェスティバル」になる以前からあったのかもしれない。もしかしたら、リーズ出身のペイル・セインツも、このチャプターハウスのメンバーもみんな、10代とか多感な時期からレディングフェスを体験していたのではないだろうか。仮にそうだとしたら、レディングフェスは”シューゲイザー”を産み出す土壌になったと言えるだろう。

蒼い海で丸まって眠るねこ

さて、肝心のチャプターハウスのアルバム『WHIRLPOOL』、まずはジャケットの紹介から。海の底みたいな深い碧(あお)の世界で丸くなる、顔も隠れた長毛の真っ白なねこ。内向的で、実にシューゲイズ的なジャケだ。中野のディスクユニオンでCDを漁っていたら、このジャケにご対面! これは何も考えずに即買いした。

ブックレットの画像には、ねこの横に水の波形も写っている。WHIRLPOOLには、渦や混乱、と言った意味があるから、やはり水の中なのか? 白いねこは首輪をしてるから、もしかしたらボーカル、アンドリューの飼いねこかもしれない。

サウンドは、この手のジャンルにしてはダンサンブルなビート。霧の中で歌っている様なリヴァービー なボーカルに、ハウスぽいドラム。”シューゲイザー”というよりマッドチェスター(英国都市マンチェスターで80年代〜90年代ごろ誕生したサイケデリックなダンサブルサウンド)って感じ。まあ、無理矢理例えるならEcho & the Bunnymen(エコー&ザ・バニーメン)とHappy Mondays(ハッピー・マンデーズ)をミックスしたサウンドかな。

足元を見るのをやめたChapter house

MVを見ると、スッゴイ男前のボーカル・アンドリューを前面に出し、かなりビュジュアル系。ま、先ほど例えに出した、エコバニもイケメンのボーカル、イアン・マッカロクを全面に出して、「サイケな耽美派」なんて言われてたから、チャプターハウスとの共通項はあるのかもね。マッドチェスターなダンスビート、ノイジーでシューゲイズなギター。そして緑深く霧咽ぶ森の中から聞こえくるかの様な、繊細で折れそうなボーカル…これはかなり女性受けするだろう。

アルバム全体はかなりポップ。シューゲイザーのウリの1つである「内向性」は若干薄い。売り方の問題で、MVとかはこんな感じに仕上がってるけど、演奏やサウンドの構築は実にシューゲイザーのツボにハマるのに、残念な感じ。その辺からバンドの迷いも伺える。もしかしたら、ライブの方が荒削りでシューゲイズな楽しみ方ができそうな気がする。

でもこの後、彼らは93年に出した2ndアルバム『Blood Music』ではエレクトロなダンスバンド風に。どうやらあっけなく足元を見つめるのを終わらせてしまったらしい。それはそれでありだけどね。そんなわけで、今回のレディングからのシューゲイザーレポートも、これにてお開き!


『WHIRLPOOL』/Chapter 作品情報

★収録曲
1.「Breather」2.「Pearl 」3.「Autosleeper」4.「Treasure」5.「Falling Down」6.「April」7.「Guilt」8.「If You Want Me」9.「Something More」10.「Need (Somebody)」11.「Inside Of Me」12.「Sixteen Years」13.「Satin Safe」14.「Feel The Same」15.「Come Heaven」16.「In My Arms」
★レーベル:Dedicated Records
★リリース:1991年4月


佐藤洋平 

福島県郡山市出身。高円寺の老舗ライブハウス「稲生座」番頭、猫の任意保護団体「高円寺ニャンダラーズ」代表。2011年より、福島第一原発事故被災動物のレスキュー活動を開始。地元・高円寺周辺を根城に、杉並区及び関東近郊で猫の保護活動や猫に関する啓蒙活動などを行う。音楽分野では、中学生から郡山の音楽喫茶に出入りし、米国や英国の新旧音楽を聴きかじる。多感な時期に聴いた”The Fools”などのレベルミュージックの影響で、不屈のスピリットを目指すようになる。

高円寺ニャンダラーズサイト http://nyandollars.org/ 

高円寺ニャンダラーズブログ https://ameblo.jp/nyandollars/