寒くなってきたら気をつけたいおしっこの話/教えて!獣医さん #01

寒くなってきたら気をつけたいおしっこの話/教えて!獣医さん #01

解説/猫の診療室モモ院長・谷口史奈先生

ねこに多い膀胱炎や尿石症(尿路結石症とも言う)。おうちのねこさんがこの病気で動物病院にかかったことがあるという方も少なくないと思います。身近な病気であると同時に、重症化したら命に関わる怖い病気でもあります。苦しい思いをしないためには、やはり日ごろの予防と早期発見が重要。すぐに実践できる対策や、なぜねこに多いのか?などをお聞きしました。

猫下部尿路疾患(FLUTD)とは?

谷口先生:
FLUTDは「Feline Lower Urinary Tract Disease」の略で、膀胱から尿道のところに起こるいろいろな病気の総称を言います。尿石症、特発性膀胱炎がねこの二大下部尿路疾患で、最も多い症例です。血尿が出る、トイレに頻繁に行く、何も出ないのにおしっこの体勢をしている、トイレ以外のところに粗相する、おしっこをするときに鳴く、などの症状で気づくことが多いですね。

尿石症の種類と原因は?

谷口先生:
結石には、療法食で溶かすことのできる「ストルバイト」と、手術しないと取り除けない「シュウ酸カルシウム」があります。前者はおしっこがアルカリ性に傾いたとき、後者は逆に酸性に傾いたときにできるのが一般的です。原因は体質や食事、環境などですが、強くストレスを感じると特発性膀胱炎になるねこさんは多いです。家の改修工事だったり、お客さんが泊まったり、新しいねこを迎えたり、ねこの性格によってはそういったことがストレスとなります。病院に検査入院したことがストレスで、逆に特発性膀胱炎になったケースもありました。

そういったストレスなどの要因で、おしっこの中にマグネシウム、カルシウム、リンなどのミネラル成分が増えたり、pHバランスが崩れたりして結晶や結石ができやすくなります。結石は結晶の大きなものを言います。肉眼で見えるサイズが結石と思ってください。結晶ができているおしっこは、よく見るとキラキラしています。 

人間の尿石症とは違うのですか?

谷口先生: 
同じですが、体の構造上、ねこの方ができやすいんです。ねこは砂漠で進化した生き物なので、少量の水で濃いおしっこを出すようになっています。ねこのおしっこは臭いですよね。それは濃縮されているからなんです。

ということは、水をたくさん飲むといいのでしょうか?

谷口先生:
はい、予防対策として、手軽にできる最善策です。おしっこが薄まって結晶もできにくくなり、いいことづくめです。FLUTDケアのフードは喉を乾かしてお水をたくさん飲むように味を濃くしてありますが、他にもいろいろお水を飲んでくれるように工夫することをおすすめします。

トイレにも気をつけた方がいいでしょうか?

谷口先生:
トイレが汚いと使わずにガマンしてしまうねこさんもいます。常に衛生的にすることが大切ですね。ねこはニオイにも敏感。人間が臭いと感じているなら、ねこさんはもっと感じるはずです。衣装ケースを利用した大きなトイレなどはねこさんには好まれますが、置き場所もメンテナンスも大変なので、小さめのトイレを複数置いてマメに掃除や丸洗いするのもいいと思いますよ。 

トイレの数は、仲良しグループの数+1が良いと言われています。例えば、4匹いて2匹ずつ仲良しだとしたら、2個(2グループ)+1個ですね。もし、単独行動が1匹ずつと仲良しが1ペアの合計4匹いるとしたら、3個(3グループ)+1個ということになります。もちろん、多い分には該当数以上あってもかまいません。要するに、仲があまり良くないねこさん同士が一緒に暮らしている場合は、十分なトイレの数を置いてあげるということですね。  


獣医師プロフィール

谷口 史奈(たにぐち ふみな)

福岡県北九州市出身。山口大学農学部獣医学科獣医病理学研究室卒業。小動物全般を診る動物病院に3年、猫専門病院に2年半勤務したのち、2016年8月に女性スタッフだけのねこ専門病院「猫の診療室モモ」を開院。幼いころから「ねこが好きで好きでしょうがなく」獣医師になっただけあり、ねこ変態度は「暴れる子でも、怒れば怒るほど可愛く感じてしまう」という最上級。愛猫はいずれも保護ねこの茉莉(ペルシャの女の子)とはんにゃ(MIXの女の子)。2018年8月には人間の女の子を出産し、ママ獣医師として多忙な日々を送る。

猫の診療室モモ http://momoneco.com/