ノンキャリア先住ねことのどかに暮らす「楓丸」のケース/愛しのりんごねこ #03

ノンキャリア先住ねことのどかに暮らす「楓丸」のケース/愛しのりんごねこ #03

「りんごねこ」をご存知ですか? これは、自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック」がつくった言葉。 FIV(ねこエイズウイルス)に感染したねこの愛称で、彼らへの偏見や差別をなくして譲渡率をアップさせたいという思いから生まれました。

さまざまな家庭のりんごねこたちの様子をお届けするシリーズ第3弾は、エイズウイルスノンキャリアの先住ねこと共に暮らす「楓丸(かえでまる)」をご紹介します。

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「2頭目に迎えたい」譲渡会で出会った丸顔男子

保護ねこ出身の楓丸が暮らすおうちは、飼い主の重藤さんご夫婦と先輩ねこ「もみじ」の4人家族。2019年1月に家族の仲間入りを果たした楓丸と飼い主さんとの出会いは、保護ねこ譲渡会でした。

「もみじを譲ってくれた保護ねこボランティアさんに挨拶しに行くだけのつもりで譲渡会に足を運んだんです。当時は『そのうち2頭目を迎えられたらいいなぁ』というくらいの軽い気持ちだったのですが、会場でこの子と出会って」(重藤さん)。

譲渡会参加時の楓丸。丸顔なので当時は「丸」という呼び名だった

もみじはいわゆるツンデレキャラで、抱っこも苦手だったそう。そこへきて、初対面とは思えないほどの楓丸の人懐こさに、もみじとはまた違った魅力を感じてがっしり心を掴まれた重藤さんご夫婦。共働きのご家庭なので、子ねこよりもある程度自立した大人ねこを迎えたいという希望条件的にもぴったりでした。

「もう、この子がいい!と心は決まっていましたが、ねこエイズキャリアであることを聞いて、やはり慎重になりましたね。先住のもみじに感染(うつ)ったらどうしよう、という心配があったんです」(重藤さん)。

大切なもみじのことを思えば、簡単には決められない

ねこエイズキャリアとノンキャリア、同居させても良い?

それから、ねこエイズについてとにかく調べまくった重藤さん。ボランティアさんに話を聞いたり、ネットで情報を集めるなどして理解を深めていきました。何も知らなかった当初は、病名が「エイズ」という響きだけに絶望感が大きかったものの、正しい知識を得ることで不安が薄れていったと言います。

「血を交えるようなことをしなければ感染のリスクは低いことが分かりました。そして唾液感染の確率はかなり低く、エイズキャリアであっても発症せず天寿を全うできることも多いらしい。それなら免疫力を下げないよう、我が家でのんびり暮らしてもらうことで発症を防ぎ、長生きしてほしいと思うようになって。ますます我が家へ迎えたくなりました」と重藤さん。

実際に、楓丸を保護していたボランティアさんは、他にもりんごねこを抱えており、ノンキャリアの猫と何年も同居させているそうですが、感染したことは一度もないとのこと。(※注)

※注:こちらのボランティアの方は、獣医師に相談の上で適切な健康管理とケアを行って飼育しています。正しい知識や対策なしにりんごねことノンキャリアのねこの同居をすすめるものではありません。

はじめは楓丸をケージに入れて、徐々にお互いの存在に慣れさせていった

もみじの弟だから楓、丸顔だから丸。「楓丸」が誕生

とにかくねこ本人たち次第、ということで、2頭の相性をチェックするべくトライアルに進むことになりました。こうして重藤家へやって来た楓丸。大きなケンカやトラブルもなく、順調にもみじと重藤家に馴染んでいく様子を見て、重藤さんご夫婦は正式に彼を迎え入れることに決めました。次の子の名前は「楓(かえで)」と思っていたそうですが、丸顔から付いた仮名の「マル」も残し、「楓丸」という名前に。新しい名前とともに新たなニャン生をスタートさせたのでした。

少しずつ少しずつ、距離が縮まっていく2頭
くっつくことはあまりないものの、こうして一緒に過ごすこともしばしば

想定外だったもみじへの好影響

楓丸が来てから、もみじにうれしい変化があったそう。
「もみじが抱っこさせてくれるようになったり、素直に甘えてくれるようになりました。これは楓丸がそうするのを見て真似したんじゃないかと思っていて」と語る重藤さん。

ねこのフリ見て我がフリ直せ、というわけではありませんが、他のねこの存在から気付くことがあるのかもしれません。

お部屋に飾られたもみじカレンダー。箱入り一人娘も良かったけれど、仲間が増えて楽しいのかも
窓辺で日向ぼっこ。ときどき「鼻チュウ」するまでの仲になった!

りんごねこには歯のケアを念入りに

ハチたまのうーちゃんの記事でもご紹介したように、免疫力が下がるとかかりやすいのが歯肉炎などの歯周病。これはりんごねこに限ったことではありませんが、特に気をつけたいということで、歯のケアは定期的に行なっているそうです。

「歯をケアするフードやおやつを与えたり、スケーリング(歯から歯垢や歯石を除去すること)をしてもらったり。常日ごろから状態をチェックしています」(重藤さん)。

楓丸のフード。ロイヤルカナンをメインに、歯磨き系のおやつを愛用

知識と愛情を持てば、りんごねこと暮らせる

今回取材を受けて「そういえば楓丸はねこエイズキャリアだった」と思い出したという重藤さん。それほどに、普段はねこエイズのことを意識することなく暮らせていると言います。最後に重藤さんはこのように語ってくれました。

「私たちは特別ねこと長く暮らした経験もありませんが、キャリアねこと暮らすことは難しくないと感じています。正しい知識を身につけてケアを実践することができれば大丈夫。私たちがねこにしてあげることよりも、ねこがくれる力の方が大きいなと。もみじと楓丸が来てくれて本当に幸せです」。

楓丸のお気に入りスポットは和室のタワー。窓から外を眺める憩いの時間
のんびりした性格の楓丸は、重藤家で自分らしいニャン生を楽しんでいる

※編集部より:ねこエイズキャリアは、発症と診断されていなくても、歯周病やねこ風邪、ちょっとした皮膚の炎症などが治りにくい場合があります。また、個体ごとに症状は違いますし、特に高齢期に入るとそういった症状が顕著になる傾向が見られます。しかしながら、生涯病気にならないねこはいません。そして何より、ねこエイズであっても、ねこのかわいさには何ら影響ありません。「この子だ!」とインスピレーションを感じたねこがりんごねこであったならば、ぜひ迎えていただければと思います。ただし、りんごねこはペット医療保険に入れないので、いつかのためのねこ貯金はしておきましょう。

(編集部)