「ねこも人も幸せにする最高の趣味!」保護ねこボランティア五十嵐さん(後編)/愛しのりんごねこ #05

「ねこも人も幸せにする最高の趣味!」保護ねこボランティア五十嵐さん(後編)/愛しのりんごねこ #05

「りんごねこ」とは FIV(ねこエイズウイルス)に感染したねこの愛称で、彼らへの偏見や差別をなくして譲渡率をアップさせたいという思いから生まれました。
りんごねこを含めた保護ねこボランティア活動に励む五十嵐さんのお話、前編では活動開始の経緯や保護したりんごねこの復活劇についてうかがいました。今回は、大変なことも多い保護ねこ活動を続けるモチベーションに迫る後編です。

「toletta with りんごねこ」ページはこちら

最期を見据えることもある、保護の基準

五十嵐さんが保護するねこは、ご自身で見つけたねこがほとんど。人から保護を依頼されることもありますが、その時は依頼者の協力を必須条件に応えることもあるそうです。
保護対象は基本的に成猫。子ねこよりも里親が見つかりにくいので、積極的に手を差し伸べていると言います。五十嵐さんが保護したねこの中には、行き倒れになっていたり、見てわかるほどの重病を抱えていて先が長くなさそうな猫もいたのだとか。
「そのまま外で暮らすことが困難だと思われるねこや、最期が近いであろうねこも保護しています。できる限りの治療を施して看病するんです。たとえ結果的に亡くなってしまうとしても、苦痛や孤独を抱えたままで逝って欲しくない。誰かの愛情に寄り添われながら、暖かく居心地のよい場所で最期を迎えてほしいと願います」(五十嵐さん)

雨に濡れる野良ねこ時代のサン爺
五十嵐さんに保護されて、こんなに安心しきった表情に
りんごねこのチビは、行き倒れになっていたところを保護された

ねこエイズ・腎臓病・糖尿病
三重苦と闘病中のイノッチのこと

2018年10月に保護されたイノッチも、そんな重病を抱えた保護ねこの1頭です。野良ねこ時代に姿を見かけた人から「ヨロヨロで妊娠しているねこがいる」と連絡があり、五十嵐さんが保護。すると、なんと妊娠ではなく左右の腎臓が腫れ上がって妊婦のように見えていたのでした。
「体はガリガリなのにお腹だけ大きく膨らんでいて、その理由は腎臓だったんです。病院で検査すると腎臓の他に糖尿病も患っていて、さらにねこエイズキャリアでもありました」

保護前のイノッチ。お腹がふくらんで見える
入院治療を経て五十嵐家にやって来た

それから始まった必死の看病の甲斐あって、徐々に回復していったイノッチ。通院や朝晩の投薬をはじめ、食事も特別メニューです。糖尿病なのでカロリー制限の必要があるので、茹でたブロッコリーやレタスなどを加えて少量のフードでも満足できるよう工夫しているそう。水もたくさん飲むようになって、保護当時とは見違えるように元気になりました。

取材時のイノッチ。穏やかな表情でまどろんでいた
イノッチは人懐こくてお茶目なねこ。これからも闘病は続く

「今逝ってくれないとお前を看取れない」
旅立つねこへの思い

闘病の末に見送ったねこもいます。りんごねこだったレオもそのうちの1頭。保護から3年間を生きたレオは、だんだんと腎不全を悪化させ、ごはんが食べられなくなってしまいました。そこで五十嵐さんは良かれと思い入院させ、カテーテルによる強制給餌を受けさせることに。すると、一気に病状が悪化してしまったのです。
「自由を愛するレオは、病院の狭いケージの中で管に繋がれるのが耐えられなかったのだと思います。そこですぐ退院させて自宅でのケアに移りました 」
退院したレオは自宅療養で奇跡の復活!それから半年も生きてくれたのだそう。

自宅療養中のレオ。背中に点滴の跡が残る
看病の甲斐あって回復。瞳に力が宿って、元気そうなレオ!

レオが最期を迎える瞬間を五十嵐さんは今も忘れられないと言います。
「私が出勤する前の朝でした。苦しそうなレオに前の晩から付きっきりで側にいたのですが、仕事へ行かなければならない時間が迫っていて。だからレオに声を掛けたんです。『今逝ってくれなきゃ、お母さんはお前を看取ってあげられない』って」
すると、それから間も無く五十嵐さんが見守る中で息を引き取ったそう。死因は腎不全から派生する尿毒症でした。
「最期まで側にいてあげられてよかった。私に後悔させないための、レオなりの思いやりだったんだと思います」
一緒に暮らしたすべてのねこの最期に立ち会えているという五十嵐さん。ねこは人に死に際を見せたがらないという話もありますが、五十嵐家のねこにとっては五十嵐さんの側こそが一番安心して旅立てる場所なのかもしれません。

五十嵐さんとねこ家族たちに寄り添われながら、天国へと旅立った
五十嵐家のリビングには、亡くなったねこたちの遺影が飾られている

里子に出たねこの幸せが何より嬉しい!

五十嵐さんが保護したねこは、人馴れ具合や健康状態がよければもみじや楓丸のように里子に出ます。保護したときは殺伐とした野良ねこモードだった子が、里親さんの元で大切にされて幸せそうな様子を知ることが、五十嵐さんにとってかけがえのない喜びだと言います。
「1頭1頭、どこで保護してどんな子だったという思い出があります。我が子同然に愛情を込めてお世話したねこが、里親さんのところで幸せそうに暮らす様子を知る時が最高に嬉しい。そんな幸せ便りが届くと、私も本人たちと同じくらいとびきり幸せな気持ちになります」
保護ねこに心から向き合うことは、保護した人にも保護ねこを受け入れて里親になった人にも大きな幸せになって返ってくるようです。

保護当時、ケガでボロボロだったサイジョウくん
ケアされてこんなに美ねこに!
今は里親さんのおうちで幸せに暮らすサイジョウくん。その名の通り、最上級の幸せを掴んだ

ねこがくれる幸せを多くの人に届けたいから、
活動を続ける

保護したねこだけでなく、里親さんの一人ひとりが愛おしい存在と語る五十嵐さん。ねこへの愛で繋がった里親さんたちは、彼女の大きな支えだ言います。
「ねこが家族になって幸せだと感謝してもらえることが本当に多くて、これが私の大きなモチベーション。こんなに深く感謝されることって、仕事でも他のことでもそれまでの人生にはなかったことです。だからまた次の人にもねこのいる幸せを届けたい、また次の保護も頑張ろうって思える。大変なことがあっても保護ねこボランティアを続けられる理由はここにあるかもしれません。この活動は、ねこも人も幸せにできる私の最高の趣味です」

五十嵐家の庭に建てられた「保護ねこ小屋」のねこたち。彼らもこれからたくさんの幸せを届けるだろう
個室で保護されている白血病のねこ。難病にもめげずに今日も頑張っている

(編集部)