にゃん生を変えた主治医との出会い「ブルーノー」のケース/愛しのりんごねこ #08

にゃん生を変えた主治医との出会い「ブルーノー」のケース/愛しのりんごねこ #08

「りんごねこ」をご存知ですか? これは、自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック」がつくった言葉。 FIV(ねこエイズウイルス)に感染したねこの愛称で、彼らへの偏見や差別をなくして譲渡率をアップさせたいという思いから生まれました。

今回登場するのは、がん研究を専門とする主治医の元で免疫力アップの治療を続けるブルーノー。りんごねこを飼う方には、ぜひ知ってほしい事例をご紹介します。

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「キャリアだからこそ我が家へ」ワクチン摂取ねこ2頭と暮らす

ふさふさしたオレンジ色の長毛に、男らしいしっかりとした鼻筋。まるでライオンのように勇ましいルックスのブルーノーは、ウィーン生まれの有名な精神科医がその名の由来です。

取材当日の様子。シャイな性格のブルーノー、ケージの中でちょっと不安げな表情

「ブルーノーは推定10歳。我が家にはほかに2頭の後輩ねこがいます。インドの思想家から名付けた白ねこのリュー珠(リュージュ)と、フランスの哲学者にちなんだ名の三毛ねこデリダ。ブルーノーと暮らすために、この2頭はねこエイズワクチンを打っています」

そう語ってくれたのが飼い主の篠崎さんご夫婦。福島の被災地で保護されたブルーノーを家族に迎えたのは、2014年8月のことでした。

「ちょうど以前飼っていたねこを亡くしたタイミングでした。新たに迎えるなら、被災ねこの助けになりたいと思ったんです。ブルーノーの写真とねこエイズキャリアであることが書かれたプロフィールを見て、『キャリアならほかに貰い手も見つかりにくのでは』と考えて手を挙げました」(篠崎さん)

同じく福島の被災ねこ14歳のリュー珠は、人が大好き!
1番年下のデリダは推定3歳。ブルーノーと一緒にいることが多い


初めは長毛種だとわからなかった訳とは?

ブルーノーは2012年、福島の原発事故避難区域でボランティアさんに保護され、その後横浜市内の動物病院に預けられていました。そこからはるばる篠崎家のある足利市へやってきたのですが、迎えた当初、ブルーノーが長毛種であることがわからなかったそうです。

「我が家へ来たばかりのころは今のように毛がふさふさではありませんでした。皮膚炎を起こして全体的にところどころ毛が禿げていたんです。預かり先だった動物病院でも原因がわからず、アレルギーかも、とのことでした。後になって毛が生えてきて、この子は長毛種だったのか!と気づきました(笑)」

当時のブルーノー。首回りのたてがみが見当たらず、別ねこのよう

環境変化のストレスで体調悪化! 口内炎と体重減少が始まる

篠崎家へやって来て1週間ほど過ぎたころから、ブルーノーは体調が急激に悪化したと言います。引っ越しによる住環境の変化や、先住ねこがいる環境へと変化したことが要因だと思われます。最初は口内炎の症状が出て、それから徐々に痩せ始めたのです。

「ごはんが足りないかな?と思いたくさん食べさせようとしました。口内炎のせいで固形物を食べにくくなっていたので、とろみのついたフードを軽く温めて食べさせました。温めると免疫力アップに効果があると聞いて。きちんとカロリーも計算していたのですが、それでもどんどん体重が減っていく。これはおかしいということで動物病院に相談して、メタカムを服用するようになったら体重が戻ってきました。炎症があって熱があるとカロリーを消費するので、食べても体重が減ってしまっていたんですね」

口内炎がひどい時には、漢方薬の「甘露飲」も服用していたといいます。

今は亡き先住ねこのココ。誰とでも仲良くできる穏やかな性格で、ブルーノーとも仲が良かったそう
口内炎の影響で口周りが黒く汚れてしまっていたころ

最悪の体調となった9歳になるころ、ガン研究の専門医と出会う

その後は継続的に通院を続けていたものの、ある時これまでなかったほど体調が悪化してしまいます。ブルーノーおよそ9歳のころ。血液検査の結果からしてエイズ発症はしてはいないものの、免疫力が低下して口内炎や鼻炎などあらゆる症状が悪化してしまいました。

「あらためて動物病院を変えようと思い、地元で人気の病院へ行ってみることにしました。予約制でいつも患者さんがいっぱいなのですが、その日はたまたま空いていて。人間のがん研究もしている獣医師に相談することができたんです。この先生との出会いが転機になりました。先生が勧める治療を始めて、ブルーノーはみるみる元気になっていったんです」

闘病中のブルーノー

ブルーノーの運命を変えた治療の流れ

  1. 漢方薬の霊芝を主体とするリンツィー液を2カ月間投与する。霊芝はねこの免疫バランスの調整によい働きをすると言われています。
  2. 1の期間が終わった後に2週間限定でインターフェロンを投与。費用は2週間で2万円ほど。先生曰く、2週間以上続けると逆効果になる場合があるとのこと。(注)
  3. 2の期間が終わった後は、漢方由来成分でできているインターフェロン・インデューサー(猫の体内にあるインターフェロンを誘発する薬。外部からインターフェロンを入れるのではなく、その猫が持っているインターフェロンを誘発・産生させて免疫力を向上させるという発想の治療法に用いられる)と、リンツィー液の投与を続ける。
  4. 3を続けながら、2週間に1度のペースで通院して抗生剤(コンベニア)注射

(注)あくまでもブルーノーの主治医による意見です。そのねこの状態に応じて判断が必要なので、愛猫を診察した獣医師の意見に従ってください。

自宅での投薬を中心に、根気強く治療を続けた

「迎えてから今が最高に体調が良い!」元気になったブルーノー

昨年夏から治療を開始し、今年春にはすっかり体調がよくなったそう。今でも朝(インデューサー、メタカム)と晩(リンツィー液)の服薬を続けています。
「飲みにくい薬はカプセルに入れて飲ませます。喉の脇の方にカプセルを入れて、そのまま口を閉じさせて顎を上に向けたまま喉をさすってやると飲み込んでくれるんです」

回復して毛並みもこんなにきれいに!

長年の悩みだった口内炎と鼻炎はかなり改善され、食欲も増したブルーノー。今ではドライフードも食べられるようになりました。体重も増えて、自慢のたてがみもふさふさに! 通院や投薬治療のほかにも、免疫力を上げるために体を温めたり、悪いものを排泄しやすくするために水をたくさん飲ませることを意識していると篠崎さん。最後にこう話してくれました。

「今のまま体調をうまく保って、天寿を全うしてほしいです。闘病は楽ではありませんが、それでもブルーノーを迎えられて本当によかった。うちに来てがんばって元気になってくれて、私たちも元気をもらいました」

一緒に寝ることも多い2頭
亡くなったココも、ブルーノーを応援しているに違いない

(編集部)