ねこの腎不全

「不治の病」慢性腎不全(※)とは?

慢性腎不全とは、腎機能が30%以下に低下した状態のことです。この病気は一度なると治すことができず、多くの猫を苦しめています。
(※)腎不全について近年では腎疾患と表記することが一般的となっておりますが、本文においては分かりやすさを重視し、腎不全と表記しております

1.腎臓の機能

では、腎臓の正常な働きとは一体何なのでしょうか?猫の腎臓は、ソラマメ型をした臓器で背側部に左右1つずつあり、これらは主に「排泄・調整・生産」の3つの役割を担っています。

排泄の役割とは、血液をろ過し、体内の不要なものを濃縮して、尿として排出することです。腎臓の濃縮機能低下によって、体内の不要な成分を排泄できず、老廃物が蓄積し、必要な水分や栄養まで喪失します。調整の役割とは、体内のpH(酸性・アルカリ性)を一定に保つことです。pHバランスが崩れると全身の臓器が障害されます。通常、食事後や運動後はアルカリ性や酸性に偏っていますが、腎臓の働きによって恒常性を維持しているのです。また、腎臓は血圧の調整も行っています。血流を常に一定に保つため、血管を収縮させて血圧を上げているのです。生産の役割とは、赤血球や骨作りを助けることです。赤血球を作るのに必要なホルモン(エリスロポエチン)の分泌や、骨を作るために必要なビタミン(ビタミンD)の活性化をします。生産機能の低下で、貧血やカルシウム不足(骨粗鬆症)が引き起こされます。

2.腎不全の分類

腎不全は、何らかの原因によって腎臓の機能が正常に働かなくなった状態です。腎臓機能の低下速度によって「急性」と「慢性」に分けられます。急性腎不全(Acute Kidney Disease :AKD)は、腎機能が急速(数時間〜数日)に低下します。原因は、脱水、下痢、出血、心拍出量減少、薬物による障害、尿路閉塞、膀胱炎や尿管の障害によって引き起こされます。例えば、夏場の車内や室内の暑い場所に長時間いた場合の熱中症や食物中毒があります。猫で注意しなければいけない食物は、長ネギ、ニラ、玉ねぎ、らっきょう、にんにく、キノコ類、牛乳、アルコール、チョコレート、ココア、アボカド、ナッツ類、貝類、イカ、タコなどがあります。一方、慢性腎不全 (Chronic Kidney Disease : CKD)は、腎臓機能が数ヵ月〜数年かけて低下します。最終的に末期腎不全へと進行していく、治ることのない疾患です。多くは原因不明であり、その治療は、慢性腎不全の進行を遅らせる、あるいは抑制することです。それにより、猫のQOL(Quality Of Life)を改善し生存期間を延長させることを目標とします。

高齢猫の30%が罹患

慢性腎不全は猫の場合、15歳を超えると約30%(3頭に1頭)が罹患しています。猫では上位の死因です。犬の腎不全と比較すると、2〜3倍も多く罹患しています。まれに遺伝性や先天性で発症することもあります。シャム猫、メインクーン、アビシニアン、バーミーズ、ロシアンブルーは家族性腎症(腎臓の障害をもつ家系の猫)であり、加齢とともに腎臓の機能が低下してきます。

なぜ猫に多いのか

なぜ猫で発症率が高いのでしょうか。それは猫の暮らしてきた環境に関係しています。猫の祖先は、古代エジプトで暮らしていたリビアヤマネコだと言われています。砂漠で生きてきた猫にとって、尿の排泄により体内の水分が失われることは一大事でした。そのため、尿を効率よく濃縮し、体内の水分を極力排出しない腎臓の作りになっています。しかし、その構造は、エネルギーを必要とするので腎臓機能を早く消耗させる作りでした。また、猫は完全肉食動物で、ほかの動物よりもタンパク質を多く摂取します。ですが、高タンパク食は腎臓を疲弊させてしまうのです。このことから、猫は高齢になると腎障害が多く見られるのです。

3.早期発見で長く生きられる

慢性腎不全は、完治する病気ではありませんが、早期に正しい治療を行うと長く生きる場合が多いです。しかし、猫の場合、症状が潜在化することが問題となっています。慢性腎不全の症状が顕著になってきたときや、血液検査が異常値を示したときには、すでに腎臓機能の70%以上が失われています。

初期ステージとは

慢性腎不全は、進行度によってステージ1(初期段階)〜ステージ4(末期段階)に分類されます。しかし、慢性腎不全の症状は初期段階では気がつきにくいです。発見が遅れ、動物病院に来た時にはすでに末期であることが多いのです。
ステージ分類に用いられているIRIS分類(※1)によると、ステージ1の初期段階では、臨床症状は明らかでないことが多く、この段階で発見することは極めて困難です。
ステージ2では、軽度の臨床症状を示し、水をよく飲む(多飲)、おしっこの回数や量が増える(頻尿、多尿)がみられます。日頃から注意深く観察していれば気がつく程度です。
ステージ3では、臨床症状は全身的に見られるようになり、水をよく飲む様になった(多飲)、尿の回数や量が増えた(頻尿、多尿)、便秘、毛並みが悪い、食欲がなくなってきた、痩せてきた、よく吐く(嘔吐)という症状を示します。
ステージ4では、腎臓以外のさまざまな臓器にも障害が起きます。全身性の異常が現れ、重度なことが多いです。

※1 IRIS分類とは
国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS :International Renal Interest Society)が、血中クレアチニン濃度(※2)をもとに分類したものです。
※2 クレアチニン濃度とは
クレアチニンとは、体の老廃物の1つです。血液に含まれるクレアチニンは、腎臓でろ過されて、尿として排泄されます。クレアチニンは、尿以外では体の外に排泄されず、血中のクレアチニン濃度が高い場合は、腎臓の働きが悪くなっている可能性があります。血液検査でクレアチニンが上昇してくるのは腎機能の75%以上が失われた状態です。

早期治療

慢性腎不全の治療は輸液療法や食事療法によって病気の進行を遅らせることです。病気の原因を取り除くのではなく、病気によって引き起こされている症状を和らげる対処療法が行われます。末期になると腎移植や腎性透析を行う必要が出てきます。一方、初期のステージで発見できれば、慢性腎不全の進行を抑える治療をすることが可能です。
2017年に東レから発売された「ラプロス」という薬がステージ2とステージ3の猫に対して有効だという報告がありました。初期ステージで治療ができれば猫の生存期間は3年延びるという報告もあります。また、2016年に東京大学の宮崎教授らが猫の急性腎不全の原因を解明し、治療や慢性化の予防に繋がる研究を発表しました。血中のタンパク質であるAIM(apoptosis inhibitor of macrophage)は、通常腎機能が低下すると活性化し、腎機能の回復に貢献しますが、猫ではAIMが十分に機能していないことが分かりました。宮崎らは、AIMを投与する事で急性腎不全の改善を促進し、慢性化の回避が可能であることを報告しました。これら新しい治療の可能性も含めて、猫の初期症状にいち早く気がつき、早期に治療することで、長く生きられることが可能となるのです。早期発見・早期治療は猫のQOLを改善し、生存期間を伸ばすことが可能なのです。

4.早期発見のポイント

猫の慢性腎不全の兆候を見抜くポイントは、初期ステージで現れる症状を飼い主が察知することです。そのためには、飼い主の知識と注意深い観察が大いに助けになります。慢性腎不全の発見が難しいところは、明らかな症状が現れず、多くは見過ごされてしまうということにあります。初期ステージで現れる唯一の症状は、体重減少、食欲低下、多飲多尿です。しかし、一般的に大体の猫が、高齢になると体重が落ちたり、食欲が無くなると思われがちなので、病気だと気がつくのが遅れてしまいます。ゆえに、日頃から愛猫の健康状態を知っておくことは、病気の早期発見をするためにも重要なことです。
では、慢性腎不全の早期発見をするために必要な日頃の健康チェックとはどのようなものなのでしょうか。日頃のチェックポイントは「食欲・体重・飲水・排尿」です。そして、これらは日頃から記録しておくことが望ましいです。

食欲

猫は慢性腎不全になると、体の中に毒素がたまり、それが食欲の減退へとつながります。この症状は数カ月にわたり、徐々に現れてくることもあります。ご飯を残すようになった、食べても吐いてしまうなどの様子を見逃さないようにしましょう。猫のご飯の回数は、子猫であれば1日3回、成猫であれば1日2回が目安です。猫は食べムラがある動物ですが、極端に食べない、過食などが見られる場合は要注意です。

体重

食欲が無くなってくると、栄養分を体内に取り入れることが出来なくなり必然的に痩せて体重が落ちてきます。この兆候を見逃さないためには、少なくとも月に1回は体重を図りましょう。体重が前回と比較してどの程度減ったかを記録しておくことが大切です。猫にとっては、0.1kgの差は大きな差ですので、出来ればデジタル体重計で細かく測れるものを使用するといいでしょう。体重測定時には、適正体重もしっかり把握しておきましょう。適正体重を知るには、猫のボディコンディションスコア(BCS)(※4)を参考にしましょう。これは猫の肥満と痩せの度合いを評価する指標です。肋骨部分と腰の部分を実際に見て、触り、現在の体型がどのスコアなのかを判断します。理想的なスコアはBCS3であり、この時の体重が、理想体重の95%〜106%の間であることが推測できます。

飲水量

慢性腎不全は、腎臓の機能低下によって体内の水分が失われて行きます。猫は普段あまり水分をとりませんが、それを補うために普段よりも多くの水分を取るようになります。いつもよりたくさん水を飲むようになったなと気がついた時には、既に慢性腎不全が進行しています。ですから、日頃の飲水量のチェックは大切です。正常であれば、猫の1日の飲水量は、体重1kgあたり50mL以下です。これを越えると多飲と言えます。
飲水量の測定は、1日2回程度、朝と夜に行うと良いでしょう。普段使用しているお皿に200mL〜300mLの水を入れ、最初に入れた量から残っている水分量を引きましょう。ウエットフードを食べている子は、この分も飲水量として計算し、長時間置いてあったものは、蒸発した水分量も加えて計算してください。蒸発水分量を計算するには、飲水用として用意したものと別に同じ容器に同じ水の量を用意し、猫が飲めないように網葢などをして置いておくと良いでしょう。猫の飲水量は元々微量なため、このような計算の工夫が必要となります。

排尿

慢性腎不全になると尿を濃縮できなくなるので、薄い尿が大量に出ます。そして、水をよく飲めば、さらにおしっこの量も増えます。正常な猫であれば、1日の尿量は体重1kgあたり50mL以下とされ、これを越えると多尿と言われています。測定の方法は、ペットシーツを使用している場合は、排尿後のペットシーツの重さからペットシーツの重さを引き、体重あたりの排尿量を計算します。猫砂を使用している場合は、排尿後の猫砂の固まりの大きさをチェックしましょう。目安として、50mLの猫砂の固まりは7cm程度です。加えて、猫のおしっこの回数もチェックしましょう。1日あたりのおしっこ回数は1〜3回が目安です。5回以上行く場合は、かなり多めで要注意です。その他にも、尿の色や匂いなどもチェックしておきましょう。

慢性腎不全の予防法

慢性腎不全は、高齢猫にとっては宿命とも言える病気ですが、日頃からお家でケアしてあげることで予後が大きく変わります。そのためには、飼い主さんの献身的なサポートが重要です。お家でできるケアと予防は3つのポイント、「水・食事・注意深い観察」を心がけてみましょう。

1、給水のポイント

猫は慢性腎不全になると、体の中に毒素がたまり、それが食欲の減退へとつながります。この症状は数カ月にわたり、徐々に現れてくることもあります。ご飯を残すようになった、食べても吐いてしまうなどの様子を見逃さないようにしましょう。猫のご飯の回数は、子猫であれば1日3回、成猫であれば1日2回が目安です。猫は食べムラがある動物ですが、極端に食べない、過食などが見られる場合は要注意です。

2、食事管理のポイント

高タンパク食(ただし正常な猫に低タンパクな食事を与えると筋肉量が減り、体重も減ります)やリンの過剰摂取は、腎臓病の症状を悪化させます。通常、猫は、肉食動物のため高タンパク食が基本ですが、必要以上の摂取は控えたほうが良いでしょう。猫の必要最低タンパク摂取量は、キャットフードあたり20%、1日あたり3〜5g/kgです。しかし、現在流通しているキャットフードのタンパク含有量は40%以上のものもあります。そして、タンパク源としては動物性タンパク質(チキン、七面鳥、ポーク、サーモン、まぐろ、かつお、卵など)が好まれますが、安価なキャットフードは植物性タンパク質(大豆や小麦、とうもろこしなど)が多く含まれているものもあります。また、肉食の猫で問題となるのは、肉に含まれるリン(主要必須ミネラル)の過剰摂取です。キャットフードも与えて、さらにささみのおやつも与えて…というような生活をしているとリンの過剰摂取となり良くありません。飼い主がしっかりとチェックしコントロールしてあげることが大切です。他には、魚などに含まれているDHAなどのN-3系脂肪酸は、血液の流れをスムーズにする働きがありますので、これらが含まれているフードを選択するのも良いでしょう。

3、注意深い観察のポイント

何よりも飼い主の日頃の観察が愛猫の一生を決めます。慢性腎不全は徐々にゆっくりと進行して行きます。動物病院での定期的なチェックに加えて、日頃から注意深く観察してあげることで、愛猫の異変にいち早く気がつくことができます。おうちで気がついてあげられる小さな変化としては、高いところに登らなくなった、毛づくろいをしなくなった、水をよく飲む、尿の量が増えた、痩せてきた、遊ばなくなった、便が硬くなったなどのサインが現れます。愛猫の声なき声に気がついてあげることが、彼らにとっては1番の救いになるのかもしれません。

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